深瀬昌久 MASAHISA FUKASE

2018年秋オランダで大きな回顧展が開催されている写真家、深瀬昌久。その集大成とも言える作品集が赤々舎より刊行されました。60年代から日本写真界の第一線で活躍した彼は、1992年不慮の事故により、その活動は閉ざされました。「鴉」が不朽の名作として語り継がれる一方、そのほかの大半の作品については紹介される機会が失われてしまいました。本書は、謎多き写真家 深瀬の40年間に及ぶキャリアを俯瞰し、その写真表現の全貌を初めて浮き彫りにしています。

北海道の写真館の家系に生まれ、「私性」と「遊戯」の視座に根差した写真表現を多岐にわたる手法で探求。その人生の中心には常に写真が腰を据え、内なるリビドーは周囲を巻き込み、己の人生をも破滅へ向かわせました。
初の決定版となる本書は、作品ひとつひとつを時系列順に整理し、深瀬が雑誌に残した撮影後記や手記から、その制作意図や背景を416ページ、全26章にわたり丹念に描き出しています。写真表現の豊かさと凄みを湛え、未来に手渡す大冊。